新宿歌舞伎町と言えば、皆さんどのようなイメージをお持ちでしょうか。「眠らない街」「欲望が渦巻く街」「まさにカオス!」そんなイメージが多いかもしれませんね。そんな歌舞伎町の一角に鎮座する、稲荷鬼王神社の少し不思議な空気感に触れてみようと思います。
お稲荷さんと鬼王権現

そもそも鬼王権現とは?
それは「鬼の王」として、病気平癒にご利益があるとされる神様のことだそう。鬼王権現は三柱の神様で、月の神様である 月夜見命(つきよみのみこと)、医療の神様である 大物主命(おおものぬしのみこと)、力の神様である 天手力男命(あめのたぢからおのみこと) の神様の総称です。
鬼王権現は、山岳信仰の聖地として知られる紀州熊野で信仰されていた神様で、この鬼王権現と稲荷神社が合祀したのが稲荷鬼王神社です。稲荷鬼王神社は「鬼王」の名を持つ唯一の神社です。
稲荷鬼王神社は、承応2年(1653年)に創建された稲荷神社が始まりです。
その後、天保3年(1832年)に熊野から勧請された鬼王権現と合祀され、「稲荷鬼王神社」となりました。
そして稲荷神社の御祭神は宇賀能御魂命(うがのみたまのみこと)。稲荷神の主祭神として知られています。
稲荷鬼王神社の七不思議?
歌舞伎町に鎮座すると言っても、いわゆるトー横などがある、「あの歌舞伎町」ではなく、その喧騒から少し離れた場所にあります。とは言えインバウンドの方々が宿泊するホテルが立ち並んでいますので、決して静かな場所ではありません。
それでも境内に入ると少しだけ静寂を感じるのはやはり神聖な空気が渦巻いている、と言う感じなのでしょか。そんな稲荷鬼王神社の不思議ポイントがいくつかありますのでご紹介します。
その1・鳥居横、鬼が抱える不思議な水鉢

稲荷鬼王神社鳥居のすぐ横に、鬼が頭上に水鉢を乗せて支えているという珍しい形の水鉢があります。この水鉢は加賀美という武士の屋敷にあったそうです。しかし文政年間(1818~1830年)になると、毎晩のように水鉢から奇妙な水音が聞こえるようになりました。そこで加賀美は、刀で水鉢を斬りつけたところ、水音は止んだのですが、その後、家人が次々と不幸に見舞われてしまったのです。
そこで加賀美は、この水鉢を稲荷鬼王神社に奉納しました。水音の正体は、水鉢を支える鬼の仕業だったと伝えられています。また、加賀美が斬りつけたのは、実は鬼の肩だったとも言われていて、水鉢をよく見ると、鬼の肩に刀傷のような跡が残っているのが見えるかもしれません。
この時、水鉢を斬りつけた刀は「鬼切丸」と名付けられ、水鉢と共に神社に奉納されましたが、その後盗難に遭い、現在は不明です。
その2・上下に分かれた富士塚

稲荷鬼王神社の富士塚は上下に分かれているというとても珍しいもの。拝殿左横の社務所の奥、もう一つの鳥居の手前に参道を挟んで左右に分かれています。
拝殿側にあるのが5合目から頂上、その向かいにあるのが1合目から4合目。これは大変珍しいとのことで全国でもとても例は少ないそうです。もともと一つの富士塚だったのですが、関東大震災や東京大空襲による被害で崩れてしまい、その際に資材として使われてしまった部分もあったようです。その後、残った石を二箇所に集めて再建したため、現在のような形になったと言われています。
かつては「西大久保の厄除け富士」として、多くの人々が参拝に訪れていたそうです。現在では登ることはできませんが、その独特な姿は一見の価値があります。
その3・宝珠をガブガブかじる仔狛犬


拝殿横の狛犬、仔狛犬がじゃれついているのはよくありますが、宝珠をかじっている仔狛犬は初めて見ました。いや、ガブガブかじって見えるのは私だけでしょうか?まだ小さくて宝珠を加えることができないのかもしれません。でもなんともやんちゃそうで可愛い!おもちゃで遊んでいるような。お母さん吽形の優しく添えてる手もいいですね。
それに比べてお父さん阿形はじゃれつく子供と遊んでいるようにも見えます。こちらもかわいい。
この狛犬たちを見ていると、自然と「子孫繁栄」とか「家族円満」とか、そんな言葉が浮かんできます。ぜひぜひこの可愛い巻き毛の狛犬に会いに行ってみてください。とても癒されますよ。
その4・眼球食鬼と言う鬼

拝殿の脇、富士塚の手前にちょこんと座っているとってもとっても不思議な存在。
こちらが眼球食鬼。顔は鬼、体はカタツムリの乗ったキャタビラ付きの家、手には眼球、そして喰らっています。名前の通り眼球を食べる鬼、と言うことですが・・・眼球そのものを食べる鬼ではなくて目の病を食べてくれる鬼、とのこと。
見た目のインパクトに最初は少し怖かったのですが、見ているうちにだんだんかわいく思えてくる眼球食鬼。疲れ目にもご利益あり?
その5・不思議な祈願法 豆腐断ち
稲荷鬼王神社に古くから伝わる祈願法が豆腐断ちです。湿疹、腫物など、あらゆる病気に対してご利益があるとされています。
まず豆腐を一丁奉納します。そして、病気が治るまでの間、本人(または祈願者)が豆腐を断つというものです。豆腐だけでなく、油揚げやがんもどきなど、豆腐製品全般を口にしてはいけないという厳しいものです。(油揚げやがんも、厚揚げ大好きな身としてはこれほど厳しいものはありません)
豆腐断ちと並行して、神社から授与されたお守りで患部をなでる「撫で守り」も行います。
その6・オール撮影OK
拝殿や本堂などほとんどの神社仏閣が撮影禁止です。ただ稲荷鬼王神社はどこでも撮影可とのこと。つまり神様と記念撮影ができるということ。
実は代々守り続けている宮司さんに「うちは全て写真撮っていいから」とおっしゃっていただいたのですが、まさか拝殿の中まで撮影可能だったとは・・・。宮司さんの稲荷鬼王神社を守り続ける厳しさと、大らかさに感動してしまいました。
そして残念ながら七不思議には届きませんでしたが、そもそも唯一鬼王の名の付く神社が歌舞伎町に鎮座する、と言うことが最大の不思議なのかもしれませんね。これで七不思議。と言うことにします。
毎年10月には稲荷鬼王神社えびすべったら祭が開催されます。稲荷鬼王神社で購入するべったら漬けは、お金がつく縁起物として有名。ぜひ購入したいですね!(べったら漬け大好き)

稲荷鬼王神社御朱印

アクセス
〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町2-17-5
- 地下鉄大江戸線・副都心線「東新宿駅」 徒歩3分
- 都バス「東新宿」 5分
- 西武新宿線「新宿駅」北口 徒歩7分
- JR「新宿駅」東口 徒歩15分
- 地下鉄丸ノ内線・新宿線「新宿三丁目駅」 徒歩15分
- JR「新大久保駅」 徒歩15分
コメント