賑やかな浅草からほんの少し歩いただけで、空気がふっとやわらかくなる場所があります。
それが、浅草寺の裏手に静かに佇む天台宗の古刹、待乳山聖天(本龍院)です。知る人ぞ知るこのお寺には、「なんでも叶う強いご利益」があるとされ、訪れる人の心をそっと整えてくれます。

境内にはいたるところに二股大根と巾着袋のモチーフ。何か不思議な印象を持ったまま本堂へと向かいました。
待乳山聖天とは。歴史ある“聖天様”の霊場

待乳山聖天の始まりは、飛鳥時代・推古天皇3年(595年)までさかのぼります。
ある日、隅田川の辺りに小高い丘が湧き上がり、そこに天より現れたのが、歓喜天(かんぎてん)=聖天様。この霊験を受け、地元の人々が祀り始めたのが由来とされています。
秘められた御力 – ご本尊:大聖歓喜天(だいしょうかんぎてん)
待乳山聖天のご本尊は、大聖歓喜天(だいしょうかんぎてん)です。一般には「聖天様(しょうでんさま)」の名で親しまれています。大聖歓喜天は、象の頭を持つ双身の神様として表され、夫婦和合、子授け、商売繁盛、学業成就など、多岐にわたるご利益があるとされています。なんでも叶えてくれる神様とも言われ、その強いパワーは怖すぎるほど。あまりにも強いパワーなので聖天様は秘仏とされていることがほとんどです。
そのため、直接その御姿を拝見することはできません。本堂の奥深く、秘仏として大切にお祀りされています。
聖天様への信仰は、古くから特別なルールがあるとも言われ、清浄な心で真摯にお祈りすることが大切にされています。お供え物として、清酒や大根、お団子などが供えられることも特徴的です。実は大根は聖天様の大好物、そして甘いものもお好きだとか。
二股大根と巾着袋

境内はとにかく二股大根と巾着袋だらけ。これらはただの飾りじゃなくって、聖天様のご利益を象徴する、とっても大切なアイテムなんです。
固く絡み合った二つの大根は、寄り添うように見えることから、夫婦和合、良縁成就、そして子孫繁栄の象徴。もう一つの巾着袋はかつて富裕層が貴重な砂金などを入れていた袋を表しており、商売繁盛や金運向上のご利益、とされています。

待乳山聖天ではお供え用の大根が寺務所で販売されています。本堂にお供えされた大根の山は清々しくさえ感じます。ぜひ本堂の中に入り、お供えしてみてください。スーッと心が軽くなる気がします。

このお供えされた大根は、翌日「おさがり大根」として配布されます。「お供物」と食紅を使った印が押されているそうですが、私は残念ながら間に合わず、頂くことはできませんでした。

毎年1月7日には「大根まつり」が開催され、おさがり大根は温かいふろふき大根として無料で参拝者に分け与えられます。1月の初めの寒い時、あったかいふろふき大根は、体も心もぽかぽかにしてくれるでしょうね。
聖天様が怖いと言われる理由
聖天様は先も書きましたが、願ったことなんでも叶えてくれると言う、それはそれは強い力をお持ちですが、「お願いが叶ったらそれっきりー」となるとそれまで見守っていてくれた聖天様は、そっぽを向いてしまうそうです。となると聖天様の御加護は無くなるわけです。一度叶った願いが崩れ落ちてしまう・・・。そう考えると大きな罰を与えられたような感覚になってしまうのかもしれません。
聖天様は大きな力で私たちを見守ってくださっています。本当に怖いのは、願いが叶ったらもういいや、と言う人間の心なのだと思ったりもします。
御朱印とまとめ

御朱印は本堂の中でお書入れしていただけます。
待乳山聖天は、ほっと一息つける優しい時間が流れる場所です。静かな自然と歴史が溶け合うこの聖域は、まるで心をそっと包み込むような温かさに満ちています。忙しい日常の中で、ふと立ち止まり、自分自身と穏やかに向き合うひとときを過ごすのにぴったりな場所です。どうぞ、あなたもこの穏やかでやさしい空間で、心のリセットと小さな幸せを感じてみてください。
待乳山聖天アクセス
〒111-0032 東京都台東区浅草7-4-1
- 東京メトロ銀座線「浅草駅」徒歩10分
- 都営浅草線「浅草駅」徒歩10分
- 東武スカイツリー線「浅草駅」徒歩10分
- 都営バス東42甲 浅草松屋前~南千住行「隅田公園」下車すぐ
- 循環バス 北めぐりん 浅草松屋前より「隅田公園」下車すぐ
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